2015年9月の活動index
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とうとう起きた大災害
2015年9月10日 大災害の日(写真は、こちら)
前日から降り続いた大雨が、鬼怒川の水位を急激に押し上げて越水、堤防決壊を引き起こした結果、常総市では、広範囲の洪水被害となりました。消防、自衛隊等による救出活動は、NHKを初めとする各メディアで一日中報道されておりました。
実は、私は、前日まで体調不調で臥せっておりましたが、迫り来る危機にじっとしてはおられず、この日は、早朝から下妻地区を見て周り、「心配で仕方がなかった地区」の予想通りの有様に愕然とし、避難所の有様を確認して、事務所に戻りました。
そして、午後は、決壊した鬼怒川の旧石下地区の様子を見に行きました。
常総市の被害の大きさは、各メディアが紹介しておりますとおりですが、原因については、その後、数日して、「浸水ハザードマップどおりの被害となったが、住民と市との意識に差があって」とか、「改修計画中のところが決壊した」とか、「そこが決壊するとは思わず、避難指示が遅れてしまった」とか、中には、「太陽光発電設備の設置のために土手を削った」ことが若宮地区の越水原因、などと言うのもあって、いろいろと今後の検討課題がメディアからも報じられております。
さて、では、この下妻地区は、どうだったのか、被害はなかったのか、というと、残念ながら、そうはなりませんでした。常総市が目立っていますが、下妻地区の被害も、メディアでの紹介こそありませんが、相当なものになっているはずです。
私が『心配した地区』というのは、下妻市の北西部、鬼怒川沿いです。
鬼怒川そのものの氾濫と、これまでにも、何打も掲載してきました「北台川」の氾濫のことです。
「排水機場」を作って、強制排水をしなければ、溢水した北台川への対応はできない、と言って参りました。今回の大雨では、鬼怒川さえも氾濫するレベルですから、当然のことながら北台川も耐えることはできませんでした。写真でご理解いただけるような状態になってしまうのです。
被害の程度ですが、農産物で言えば、ちょうど、米の借り入れ時ですから、せっかくの一年の収穫がなくなってしまったでしょう。また、私が訪れた鬼怒川長塚橋近くの食肉加工業者では、屋根近くまで水に浸かり、豚の頭数換算で1500頭程度の廃却処理が必要だそうです。
また、田畑、住宅への浸水は、その後始末にたくさんの労力と時間がかかります。
まだ、集計はできておりませんが、相当量の被害になっているはずです。
その後、9月25日現在として、下妻市の被害状況は、次の通りと市役所から発表されています。
(9月25日 午後4時現在)
【被害区域】
鬼怒川 沿川 全域
【死亡者・行方不明者】
0人
【家屋等被害】
床上浸水:52棟 床下浸水:95棟 敷地内浸水:多数
【農業被害】
149.3ha 被害総額 146,745,000円
(主な被害 水稲 129.3ha 137,225,000円)
【道路被害】
下妻市道:道路閉鎖
前河原地先:1か所
鬼怒地先:1か所
翌日の9月11日は、雨は収まって良い天気になりました。
この日は、東日本大震災から四年半だと、メディアが放送しておりましたが、あの時、東北で見た有様に近いものを、地元で見ることになるとは思ってもいませんでした。
一日経過して、その後、どうなったか、水は引いたのか、被害はどの程度になっているのか、前日の現場を再度見てみようと思い、車で回ることにしました。
その途中、北台川改修期成同盟の大島会長ご自宅を訪問しました。
挨拶もそこそこに会長の口から出たのは、「仰るとおりのことがおきてしまいました」、でしたが、どうお答えしてよいのか、わかりませんでした。
こんなに残念な『当たり』は、ないのです。
これから、どうしたら良いのでしょう。
今回の災害を冷静に考えて、今後に備えることが、まずは重要なのではないでしょうか。常総市の場合、浸水想定を周知し、住民にこれを良く理解してもらえていなかった、と言われています。避難する仕組みをつくるだけではだめで、情報の出し手である自治体と、受け手である住民の「双方が意識的に努力しないと機能しない」と言う人もいます。
結局、後手に回って「非難が遅れた」と言うこともあるようです。
常総市の洪水ハザードマップには、浸水想定が掲載されていますが、今回の浸水は、ほぼ、その通りだった、とのことです。でも、「うちは、大丈夫だろう」とか、そもそも、そんなものを読みもしなかった、という人も多かったようなのです。
それと『決壊した堤防』なのですが、『十年に一度の雨量には耐えられない』ことが分かっていて、用地買収などをして、これから堤防改良に取り組もうとしていた矢先に起きた災害でした。
東北大震災が起きる前に東京の堤防予算折衝の時に、「千年に一度の大地震に備える必要があるのか」と言った人がいますが、その直後に、まさに千年に一度の大地震が起きてしまいました。『何年に一度』というのは、明日にでも起こり得る、と言う事を除外してはいない、と言うことなのです。このことは、全ての人が知っておくべきことだと思います。
下妻地区では、北台川の溢水がおきました。
想定外だったのは、この地区での鬼怒川からの越水でした。
今回、立派な実績になってしまいましたので、今後は、この両方を念頭に対策を講じなければならない、と考えております。
常総市を訪れた国土交通省大臣が、「全国で全ての河川用件を満足している河川は、ゼロで、優先順位をつけるのが難しい」と言っているとおり、その改修には大きな費用がかかるのですが、今後、日本国全体の予算の中での優先順位は、うんと高くしなければならないと思います。
「起きてしまってからの対策」よりも、「事前の防災対策」に重点を置いてと、私は各所でお話して来ました。「北台川改修期成同盟」でも同じです。あぶない、と言われている場所で災害が発生して、起きた災害の復旧をした上での防災対策をするのと、防災対策をしておいて災害を防ぐとでは、どちらが費用がかからないかは、誰にでも分かるはずです。 一時期、「コンクリートから人へ」ということがありましたが、その「人」を守るには、コンクリートの働きが不可欠な場合があるのです。河川防災対策などは、その最たるものではないでしょうか。そうしたことが、結局、全体費用の削減に繋がるのではないでしょうか。
以上は、「もの」への対策、「もの」の必要性ですが、それこそ「人」への対策も必要です。
情報の伝達方法に問題はなかったでしょうか。避難所の場所の設定や避難所の運営に改善する余地はなかったでしょうか。防災に対する行政側の考え方が、住民側に充分に伝わっていたでしょうか。こうした「ソフトウェア」の問題についても、いろいろ検討する課題ができた、と考えております。
今後、今回の災害を実績として良く検討し、反省して、今後の対策を講じ、こんどこそ、「防災」とするために、茨城県と国に対して強く働きかけて行きたいと、私は考えております。